2009年5月25日月曜日

近頃の猫ちゃんの病気編 その3

さてさて,ちょっと間があいてしまいましたが,近頃の猫ちゃんの病気編その3です.
その3は,猫ちゃんの心臓病についてお話します.
心臓病と言っても実に様々な種類の心臓病がありますが,猫ちゃんの心臓病で特に注意しておきたいのが「肥大型心筋症(HCM)」です.

みなさんは心臓病と聞いて,どんな症状を連想されますか?
動悸がする?歩くとすぐに息切れがする?胸のあたりが痛くて苦しくなる?・・・・・・・
どれも確かに心臓病の症状としては正しいでしょうねぇ.
でも,猫ちゃんの症状としては本当に当てはまるでしょうか?
全く当てはまらないことはないけれど,このような症状はヒトが自覚症状として捉えることのできるものですよね.
逆にいうと,猫ちゃんの場合は,心臓病は確かに存在していてもご家族の皆様がわかるような明確な症状はあらわさないのが普通です.

じゃあ,水面下で心臓病がどんどん進行して行ったらどうなっちゃうの??ってことになりますが,実は明確な症状が出てしまうほど進行した状態で病院に来られるケースがまだまだ多いのが現状です.
それでは,明確な症状とはいったいどんな症状なのでしょうか?
これを,猫ちゃんでは重要な心臓病である肥大型心筋症を例にとって説明いたしましょう.

肥大型心筋症は,簡単にいうと心臓の壁が分厚く(肥大)なり心臓の中の空間が狭くなってしまう病気で,血液の循環が悪くなったり(心不全),心臓内で血栓(血の塊り)ができて血管に詰まったりしてしまう(大動脈血栓塞栓症)病気です.
しかしながら,上述したとおり,実際に心不全になってしまったり,血栓症になってしまったりして初めて病院に…ということが多いのです.
つまり,明確な症状とは,心不全の場合は血液循環不全により肺に水が浸みわたる肺水腫という状態や,胸の空間に水が漏れだす胸水貯留の状態になり,うまく息ができず呼吸困難に陥ります.
ここまで来てしまうと,誰が見ても明らかな症状ですよね.
また,大動脈血栓塞栓症の場合はもっと悲劇的で,大きな血栓が股の付け根の血管に詰まってしまい,そこから先の足が麻痺してしまい後ろ足が全く立てない状態になってしまいます.本人は激痛とショックのため大きな声で鳴き叫び,口を開けてハァハァと呼吸をします.
これも誰が見ても明らかな症状ですよね.

さて,どうでしょうか?
みなさんの愛すべき猫ちゃんがこんなに苦しい状態になって初めて病院に…でいいでしょうか?
このブログは,あえて現実的な問題を明らかにすることにより,みなさんの家族の大切な一員である猫ちゃんには,こんなつらい思いをさせたくないということが目的のひとつです.

では,どうしたらいいのでしょうか?
もう,みなさまにはお分かりですよね?(その1,その2でもふれました)
そうです,普段からの健康診断です!
これに尽きます!!いや,これしかないっ!って感じです.
医学には,次の最大原則の言葉があります.
それは,『どれほど医療技術が進歩しようとも,予防に勝る医療は存在しない』という言葉です.
そうです.どんな病気も早期発見早期治療です.
心臓病の初期診断に,難しい検査や最新の医療機器は必要ありません.
綿密な身体検査と聴診器さえあれば見つけることができるのです.
みなさんの主治医の先生からもいつも言われていると思いますが,定期的な健康診断は是非受けて下さい.Dr.Joyからもお願いです.

最後に肥大型心筋症の特徴について記載しておきます.
発症年齢は若い猫から中年までで,雄の猫の方が多いです.
印象的には,比較的大きな体格の雄猫に多く見られます.
好発猫種に,メインクーンとアメリカンショートヘアあげられているので,これらの品種の猫ちゃんは要注意してください.
健康診断などで早いうちに心疾患が見つかり,肥大型心筋症の疑いがあれば,レントゲン検査や,心電図検査,超音波検査,血圧検査などを行います.
完治はできませんが,病気の進行を遅くしたり,合併症の予防をしたりすることはできますので,診断が下っても悲観的になることはないです.
猫ちゃんとご家族の皆様と我々動物病院スタッフとでタッグを組んで,前向きに頑張って行きましょう!!
とにもかくにも,健康なうち,健康に見える?うちに病院にお越しいただき,健康診断を受けて下さいね!

それでは,次回のその4をご期待下さい.

0 件のコメント:

コメントを投稿