2011年3月24日木曜日

福島原発の放射線について

未曾有の大震災から2週間が経とうとしています.
宮城,岩手,福島など現地では懸命の復旧作業が行われています.
未だ行方不明の方々が多くおられるという知らせを聞くたびに,本当に胸が痛みますが,被災された皆さんは,一生懸命頑張っておられます.
一日も早く復興できますように,みんなで力を合わせて応援しましょう!そして,頑張りましょう!!

私が所属している獣医師団体の中にも被災した仲間がいます.その先生たちは,自らも被災しているにもかかわらず,現地の動物たちの救命活動を行っています.
彼らと被災した動物たちのために,全国から集められた救援物資や医薬品を送っています.
仲間の先生たちへの熱い思いが必ず届くと思います.

さて,昨日,東京の水道水の放射性物質が飲用規制値を上回ったと報道されました.
この瞬間,多くの動物病院に問い合わせの電話が殺到しました.
今日も,相当数の問い合わせがありました.
空気中の放射線量に関しては,先日のブログに書いた通りで,東京では今のところ全く問題ないと思います.
報道や官房長官の記者会見では,放射線量にせよ水道水の放射性物質にせよ,何でもかんでも「直ちに身体に影響が出るものではありません…」と繰り返し繰り返し言っていますね.
でも,皆さんが心配されているのは,直ちに出なくてもこれがずっと続いたら体に影響が出て,いつかはガンになって死んでしまうのではないかというような不安があるのだと思います.
今回の原発事故により,放射線への関心が一挙に高まったため,必要以上に身体への影響を気にしてしまうのはごく自然のことですし,無理もないことだと思います.
しかし,現在のところは全然問題ないと思います.
放射線を体いっぱいに一日中浴び続けるわけではありませんし,私たちや動物たちの身体はそんなにやわではありません.
万一,その瞬間にDNAに損傷が起きたとしてもすぐに対処されます.
私たちの身体は,そういう作業を毎日毎日きちんと行っているのです.
そんなことを心配するより,今すぐにでも煙草をやめましょうね.って言いたいですね.
また,この機会に,日本を離れて米国に避難される方も多くいますが,仮に東京-ニューヨーク間を往復したら,高度1万メートル上空を長い時間通過するため,それだけでも200マイクロシーベルトの放射線を受けてしまうことになります.
これでは,何のために避難したのか分からなくなってしまいますよね.
もっと,極端なことを言ってしまうと,私が幼児だったころは,米ソ軍拡競争の真っただ中で,両国だけでも何十回も(もしかしたら百数十回?)地上で原子爆弾や水素爆弾の核実験を行っていました.
この悪魔の爆弾を爆発させていたのですよ!しかも地上で.
恐らくその時は,チェルノブイリ原発事故と同様に,相当量の放射性物質が地球全体に飛散したと思います.
核実験場の現地の方々は,本当に不幸な事実の報告がされていますが,その他の地域では具体的な報告はあまり知られていませんね.
でも,今回の事故は,詳細すぎるくらいに実際の数値が報告されています.
だからこそ,もっと冷静にその結果を受け止めて,パニックにならずに冷静に行動するように努めましょう.
ご家族のみなさんが,不安に思い,冷静さを欠いた状態でいれば,必ず動物たちに伝わります.そうすると,理屈のわからないワンちゃん,ネコちゃんたちはもっと不安になります.
この子たちのためにも,気をつけましょうね.冷静に冷静にね.

さて,水道水の話に戻りますが,大人の人や成犬,成猫であれば問題ないと思います.
もし,乳児向け飲用規制値(1キログラム当たり100ベクレル)を上回った状態が何日間も続いた場合は,授乳期の赤ちゃん犬や猫は念のため控えた方がいいでしょう.
では,大人であれば問題ないのかということになりますが,飲用規制値を上回る水道水を飲み続けることによる将来の発がん率については,10年20年40年の歳月をかけて統計調査をしなければ分からないと思うので,今のところでは分かりません.
分かりませんが,このレベルのものであれば統計的な有意差(統計的に意味がある結果)は出ないでしょう.
繰り返しになりますが,喫煙や光化学スモッグなどの有害物質は発がん性が認められていますし,煙草を吸わない人や空気のきれいな地域に住んでいる人に比べて明らかに有意にガンになる確率が上がります.しかも何倍という数値で.
これは,問題のすり替えだという意見も出るかもしれませんが,現実問題としては,パニックを起こすような状況ではないという説明をするために比較事実をあげさせていただきました.

それにしても,水道水に放射性物質が認められたという報道が出たら,世間は,昨日まで大騒ぎしていた空気中の放射線の数値がいくつだったかという事は,ちょっとどこかに行ってしまってませんか?
赤ちゃんや乳幼児のおられるご家庭のお母さんやお父さんは,本当に毎日心配されていると思います.
当然のことだし,ごく自然な当たり前のことだと思います.
全く心配ないし,全然気にしなくてもいいですよとは,残念ながら言えませんが,今,少しずつだけども一歩ずつ確実にいい方向に向かって進んでいると思います.
もし,悲観的な情報が入ってきたら,すぐにこのブログできちんとお伝えしようと思いますので,その時は是非しっかりと読んでいただければと思います.

今,全国から自衛隊や消防の方たちが駆け付けてくれて,現場の東京電力の作業員やその関連会社の作業員の方たちと一緒にそれこそ命がけで懸命に復旧作業をしてくれています.本当に有難い事だと思います..
だから,この方たちのことを信用しましょう!そして,みんなで応援しましょう!

2011年3月22日火曜日

動物達に心のケアを☆☆☆

余震の続く毎日ですが,皆様は大丈夫ですか?
落ち着いた毎日が過ごせていますか?
病院がある世田谷区は計画停電の指定地域から外され,申し訳ないほどに平常な生活,診察が出来ています.
停電はありませんが,節電は地震直後から心がけていて,病院内の照明の一部や,夜の外看板の照明点灯などを控えています.
看板の電気がついていなくても,通常通り朝8時~夜8時に診察していますので,何かありましたらいつでもご連絡,ご来院ください.

今回の東日本大震災では,東京も震度5強というとても大きな揺れを記録しました.
多くの方が経験したことのない規模の地震に本当に驚いたことと思います.
この最初の地震だけでも充分すぎる恐怖を感じたのに,その後の余震,停電などで飼主の皆様はなかなか落ち着けない日々を送られているのではないかと思います.
でも,今回の地震では,我々人間だけでなく動物たちも大変大きな恐怖を感じ,不安な気持ちを引きずっている可能性があります.
皆さん,よくPTSD(心的外傷後ストレス症候群)という言葉を耳にすると思いますが,これは人間だけではなく,ワンちゃんネコちゃんにもみられる事なのです.

例えば,今回の地震の後から小さな物音に過剰に反応するようになり不眠状態になってしまったり,
食欲がなくなったり,食べても吐いてしまったり,下痢してしまったり.
何にもないのに常に小刻みに震えてしまったりというような症状が見られたりしていませんか?
もちろん,その子その子によって症状の出方は様々ですし,症状があまりにも漠然としているので,
PTSD以外の病気のこともありますが,もし,そんな様子がお家の動物たちにみられた時は,まずは出来るだけ傍にいてあげて,優しくなでながら,落ち着いた声で「大丈夫だよ.傍にいるよ」と言ってあげてください.
この声かけ行為は,動物たちに安心感を与えるので,出来る限り繰り返し行ってください.
PTSDの症状が現れ始めた初期の段階では,この声かけ行為はとても大事です.
逆に注意していただきたいのは,初期の症状を放置してしまうと,ワンちゃんネコちゃんがより重度の症状(パニックを起こすなど)を呈するようになってしまうということで,絶対にやってはいけないことは,不安で騒いでいる子を叱ることです.
とにかく,優しく落ち着いて接してあげてください.

PTSDを解決していく手段は,今回のような大震災により脳内に刻み込まれてしまった恐怖体験ルートをこれ以上増幅して太くしてしまうことなく,面白くて嬉しくて楽しいルートをどんどん太くしていって,逆に恐怖体験ルートをどんどん凌駕して行き,ワンちゃん,ネコちゃんたちに自信を取り戻してあげることです.
そのためには,何よりもご家族の皆さんの笑顔ですよ!!笑顔が一番です.
たくさんたくさん一杯一杯褒めてあげてくださいね.
そして,ワンちゃん,ネコちゃんたちが大好きなご家族の皆さんとガッチリとした絆で結ばれていることを再認識してください.
だって,私たち自身がこの子たちにどれだけ助けられてきたかを一番よく知っているのですから.

2011年3月16日水曜日

動物たちのご家族の方々へ-東日本大震災-

3月11日(金)に発生した東日本大震災により,多くの尊い命が失われたことに深い哀悼の意を捧げます.また,同時に被災されました多くの方々に心よりお見舞い申し上げます.

皆様のところでは大丈夫でしたでしょうか?
東京でも相当の揺れで本当に大変でしたね.
被災地の状況が詳しく判明して行くにつれて,余りの惨状に言葉もありませんが,是非希望を捨てずに頑張ってほしいと思います.

さて,震災が起きた後から,皆さんもテレビや新聞,ラジオ,インターネット,メール,ツィッターなどなどから様々な情報を耳にして目にしてこられたと思います.
悪質なチェーンメールや風評により東京では軽い(もしかしたら重い)パニックに陥っています.
現在のような情報が氾濫する時代では,短期間にしかも簡単に集団心理が暴走してしまいます.
自分は普段は冷静沈着なほうであると思っていても,今の不安を煽るだけのテレビやインターネット情報を目にすると,簡単に惑わされ集団ヒステリックなパニック状態に陥ってしまうのです.
特にテレビ報道の不確定な情報は,正直聞き流した方が無難です.
国民をこれだけ不安にさせて集団催眠にかけているのですから,むしろ悪質とも言えるのではないでしょうか.

皆さん,被災地の方々は東京とは全く比較にならない状況で毎日一生懸命頑張っておられます.また,被災地でそれこそ命がけで懸命に復興作業をされている方がたくさんおられます.
そういう方たちの足を東京で引っ張るような行為(ガソリンや生活用品などの買いだめなどなど)は,なんとしても防ぎましょう!

以下に参考になる情報がありますので紹介いたしますね.
「遠くからでもできること,すべきでないこと,被災地の人々に迷惑をかけず助けとなるための行動法まとめ」というものです.
アドレスは,http://gigazine.net/news/20110312_how_to_help_your_loved_ones_from_afar/
です.
あくまで参考ですが,ご覧いただければと思います.

皆さんの中にも今すぐにでも被災地に行って何かをしたいと思っている方がいると思います.
また,行けないにしても色んなものを被災地に送りたいと思っている方も多いと思います.
しかし,災害が起きて間もない今では,このような行為が実は大変迷惑になってしまします.
尊い善意がかえって迷惑や混乱を招いてしまうのです.
このことについても上記のサイトに詳しく記載されていますので,参考にしてください.
今は,この東京にいても出来ることから始めて行きましょう!!
それこそ,節電,買いだめをしない,そして,義援金の募金をするなどから始めることがいいと思います.

さて,それから皆さんの大きな関心事として,被災地のワンちゃん,ネコちゃんなどへの救済はどうなっているのかという問題があります.
現在,日本獣医師会や日本動物愛護協会,日本動物福祉協会,日本愛玩動物協会の協力で「緊急災害時動物救援本部」が立ち上がりました.
日本動物愛護協会のホームページに緊急災害時動物救援本部の活動として,義援金の募集をしております.
http://jspca.or.jp/cgi-bin/jspca/news_disp.cgi?52
この義援金は,宮城県,仙台市,盛岡市に確保された動物救援物資の拠点から,ペットフード・ペット用品の輸送の手配を行なったり,それぞれの拠点から県内・市内の必要な場所に配布することなどに使われます.また,今後,被災地の獣医師会,自治体とも連携を取りながら,被災動物の保護を支援を行っていく予定です.
当院にもこの義援金の募金箱が置かれていますので,皆さんの善意をお願いいたします.

最後に,福島の原子力発電所で起きている事故についても皆さん大変不安に思っていらっしゃると思います.
現在,現地で懸命の作業を行っていただいており,状況が刻々と変化するので明確なことは言えませんが,現時点の状況では東京はまだまだ全然安心だと思います..
この情報もテレビ報道では,国民を意図的にパニックへ誘導しているとしか思えないほどひどい報道の仕方ですね.(まるで,バラエティドラマでも作っているのかという感じです)
通常の放射線の10倍とか20倍とか言われても,一般の人には全く理解できませんし,何マイクロシーベルトだ何ミリシーベルトだって言われて理解できる方が何人いるのかってことですよね.
そんなことより,実際問題どうなんだということですよね.
例えば,皆さんが健康診断で行う胃のレントゲン検査による被ばく量は0.6mSv(ミリシーベルト)で,CT検査の被ばく量は6.9mSvです.
3月15日の北関東での測定値は0.005mSv以下ですから,人も動物たちも全く問題ありません.
第1原発正門でも1時間当たり0.59mSvだったそうです.
また,テレビでよくロシアのチェルノブイリ原発事故と今回の事故をあたかも同様であるかのごとく報道していますが,これも全く違います.
チェルノブイリ原発事故は,原子炉が完全にメルトダウンしたのに,手を付けずに何週間も燃え続けた事故です.チェルノブイリの場合,事故から何年も後まで現地の食料や水に含まれた放射能は一切モニタリングしなかったばかりか,危険性についての情報も全く知らせずに汚された食品,麦,牛乳や水などを食べ続けた現地の人々が病気に なってしまった,人類史上最低の事故です.
事実が完全に隠蔽されたチェルノブイリの事故に比べて,今回の福島原発事故は複数の独立した団体によりモニタリングされつづけ,それを日本政府が発表しているので,放射能のレベルに関しての情報は大変的確であるといえます.
だからこそ,公開されている情報を分かりやすく明確に理解できるように努めなければならないですよね.
決死の覚悟で不眠不休で懸命に作業をしていただいている現場の作業員や消防の方々,自衛隊の方々をもっとみんなで応援しましょうよ!!
そして,無事にこの事故が終息できるように,みんなで祈りましょう.

これから,被災地の復興に向けて多くの力が結集して行くと思います.
日本人は今までも多くの災害に立ち向かい,そして,復興してきました.
被災地の方々へエールを送り続けて,今,東京にいる私たちが出来ることを精一杯行って行きましょう.
そして,また,被災地の方々が大切な家族の一員である愛するワンちゃん,ネコちゃんたちと一日も早く一緒に暮らせる日がきますようにみんなで頑張りましょう!